【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
美樹はジャージのズボンのポケットから煙草を取り出し咥える。


「おい美樹、ヤニ臭くなんだろーが!吸うのヤメロっつーの!」


「もう帰るだけだろー?案外ケチ臭いなぁ里佳子は。ちゃんと消臭剤用意してあるから帰りテキトーに皆で使ってくれよ」


何とも教師らしからぬマイペースな態度を貫く美樹は、里佳子の注意を無視し煙草に火をつけ、第二関節に煙草を挟み込む。


「じゃーとりあえずまぁ、うちのクラスのちーっぽけな社会がどう崩壊してんのか、掻い摘んで誰か説明してくんねー?」


「あのねぇミッキー、ちーっぽけな社会がクラスにあるって分かってて放置してたの?」


そのあまりにもマイペース過ぎる美樹に、呆れたように笑って成が問題提起すれば、美樹は無気力なようで鋭い目をぬるりと成に向けた。


「そのちっぽけな社会を俺達大人が押し込めて平等社会築いたところで、ヒエラルキーが無くなるモンでもねーべ。俺達大人はイジメは無くせないの。無くそうとする振りをしながら最悪のケースになる前にそこから関心を逸らすくらいしか出来ないのが現実」


そんな事生徒に普通に話すなんて、非常識にも程がある。でも、多分美樹は私達にだからそんな事を言うのだ。その現実を受け止められるのは、あのクラスでも『問題児』の括りになる私達だけだろう。
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