【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
美樹はおそらくデスクとして使っているであろう机からごそりと紙を一枚取り、ソファーに戻りペンでさらさらとそこに図を書き出す。


「んまー、今までは簡単に言うとクラスは三つと少数に分かれてたの。ピラミッドの下はクラスの少数の大人しいグループの男女と地味なメンツ。ここに燭はいたな?意図的に」


「意図的というか……まぁ、はい。そうですね」


ふぅ、と煙を肺から吐き出した美樹は、再度煙草を加えてニコチンを吸い込みながら次の書き込みをする。


「真ん中はクラスの殆どで、上は女子の五人グループと男子の三人グループ。ここのリーダー格が里佳子と成。間違いないな?」


「んー、リーダーに自分でなった自覚は俺達には無いけど、そうなんじゃん?ねー」


「それな。勝手にガキ大将みたいに持ち上げられて、迷惑なんはこっちだってーの」


美樹の状況把握能力には驚く。朝夕のホームルームと物理以外関わる事も無い大人だと思っていたのに、この男はあの小さな社会を良く理解している。


「で、笑里はここだった。所謂、この小さな社会の傍観者」


「え、ええ……その解釈で、間違いないとは思います」


三層のピラミッドの隣に書かれた黒丸は、この世界とは別の世界で生きているつもりだった私そのもの。このちっぽけな世界の住人は私を異質な存在としてほんの数カ月前まで見ていたし、この空間以外のクラスメイトは未だにそういう目で見ているに違いない。


「さて、これが色んなきっかけで崩れた。その大きな要因は何だろう」


答えは誰しもが分かっている。その大きな要因の当人がすっと手を挙げた。
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