【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
だけど、そのやり方が合わないタイプの人間だって少なからずいるわけで。


「だーくそ!イラつく!誘導尋問みてーな事しやがって!早く結論言えや!アタシは頭良くねーからそういうの無理!」


美樹のそれを『誘導尋問』だと思えるのだから決して頭が悪い訳では無いだろうが、やはり、真っ直ぐ生きる里佳子にはこれは合っていないようだった。


この里佳子の発言までも計算だったのか、美樹は無気力な顔にほんのりと笑みを浮かべる。


「じゃあ、ハッキリ言うわ。お前達の不和はあのちっぽけな社会に不和を齎すの。だから、それを早く解決してくれないか?」


放たれた言葉が里佳子と燭の問題だと言う事は言わずもがな、誰もが分かった。


「なっ……!全然、ハッキリしてねーわ!」


里佳子も気付いているのは言い淀んだのが何よりの証拠。美樹はそれを確認し、コーヒーを飲み干して立ち上がった。


「俺は今から部活の顧問で顔出さなきゃだから後はお若い人達でー」


「ハァ?言い逃げかよ!ってかお前マジ教師失格過ぎんだけど!」


いくら里佳子が騒ごうとも、多分、ヒューマノイドロボットのルイですら美樹には敵わない。


この人は、ルイを生み出したチームにいた聡明且つ、未知数の高い大人なのだから。


「それなー。俺、教師は向いてないよ。イジメとかヒエラルキーとか根絶無理だと思ってるしなぁ。……でもまぁ、最悪な結果にならないように導こうとは思ってるし、その為に色々出来る頭はある。結構頑張ったから、後よろしく」


去り際の一言も、何とも美樹らしく教師らしからぬ言葉だったけど、もう里佳子すらそれ以上美樹に何か言う気力を失いながら、美樹の秘密基地には私達五人だけ、ぽつりと取り残された。
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