【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「ねぇ……ミッキーが顧問の部活ってどんな緩い部活?」


沈黙の中、どうでも良い疑問を零して成がヘラヘラと笑った。


「パソコン部だったかな。活動内容謎だけど」


「何で燭は知ってんだよ。そんでもってどうでも良過ぎるわ。あー、馬鹿らし」


真面目に答えた燭共々呆れたらしい里佳子は、さっきの勢いが嘘のようにため息を零してソファーにドカッと腰を下ろす。


どうやら里佳子は今朝の騒ぎの事についてはあまり思い悩んでいないようだ。それが分かり、ほんの少しだけ安心する。


そして、安心する自分に気付いて左の胸の奥がざわざわした。どんどん人間臭い考え方になっている自分に、恐怖を覚えたのだ。この恐怖ですら、人間臭くてならない。


「エミリ?やっぱり今朝から無理をしているようだね。顔色、悪いまま 」


「いえ、平気、です。それに今は、美樹先生の言うようにここ間の不和を解消すべきかと思います。だって」


言葉が詰まる。不和解消と言ったって、簡単には行かない感情の螺旋が原因なのは知っているから、無責任な発言だとも思う。けれど。


「だって、里佳子には以前話した事があるとは思いますが、口で思いを伝える力があるのに、勿体無い、じゃないですか」


私にはまだ、それが出来る術は揃ってない。ルイだってまだ、それを手に入れる途中。出来ると思っていた成だって、一つだけ失っているせいでそれは叶わない。


しかし里佳子と燭にはそれが出来る。有り過ぎて臆病になっているだけで、全部を表す術を、持っている。
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