【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「どうして?これが先生の言う不和じゃないなら話したらダメじゃないだろう?友人に、それこそ、昔話をしているだけじゃないか」


「じゃあ何で、不安な時の癖やってんだよ?その眼鏡拭き、お前が眼鏡掛け始めた頃に初めてアタシがやったヤツ。燭は、毎年アタシが誕生日にやってた眼鏡拭きを必ず持ち歩いてて、不安な時はそれで眼鏡拭くよな?……そんなとこまで、昔のままかよ」


彼女がどう思っているか分かっているうえで話す燭と、本当は不安で堪らない彼の気持ちを小さな仕草で分かっている里佳子。


私とは違う、完成された心同士が繋がっている二人。繋がりを断ち切れないくせに、お互いを守る為に距離を取ろうと必死にもがいている。


真ん中に挟まれた成が微妙な顔をしていた。ある種シリアスな空気感だが、おそらく成は気まずさに耐えられなくて一人違う事を考えているのだろう。


「リカコ、アカリ、話を割って悪いんだけど、ナルが可哀想な事になっているからボクの隣に呼んであげても良いかな?」


そして成の様子に気付いたルイが、まだ言い合う二人を割って成をこちら側へ呼んだ。あのルイが、自分の意思で、人の気持ちを汲んだのだ。こんな状況下でも、ルイはまた人間に近付いている。


「ルイぃ大好きぃ」と何とも情けない声を上げた成は、素早くルイの隣に座り、ルイへと猫のように擦り寄る。そんな成を、ルイは無表情で押し退けた。
< 173 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop