【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
美樹は、力のこもっていない瞳でぬるりと教室を見渡すと、うん、と首を縦に振る。


最も、その動きは『振る』というにはあまりにも気だるげで緩やかで、力の無い動作である為表現が正しいかどうかは考えものなのだけれども。


「はーい、今日も欠席者無し、と」


「ホント毎度の事ながら適当だよなぁ。ミッキーの出欠は」


「成煩いぞー、そんな生意気なお前は修学旅行実行委員決定な」


まるで有無を言わせない、というより、どうせ嶋山成にそれをさせるつもりだったらしい美樹は、気だるげに言葉を放つと嶋山成の次の言葉を待たずして言葉を続ける。


「さて、ルイには転校早々で申し訳無いんだけど、まぁ決まり事なんで来月の修学旅行の班決めと実行委員残り三名の選出やりまーす」


続いた言葉に、クラスメイト達は各々ざわつき教室が色んな音で彩られる。


そうか、もう修学旅行の季節になっているのか、なんて状況だけを把握して冷めた事を思っているのはきっと、私だけだろう。


この彩に、私の存在はやはり不必要であり、同じ空間にいながら世界は私の周りだけ別物である。
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