【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
成のあれが本人の語った原因の怪我でないとしたら、他者との事故での接触が原因か、はたまた本人または他者による故意の怪我、という事だ。


嘘をついているとしたら、不意に起きた事だとは考えにくい。


ルイは変わらず無表情に、里佳子は悔しそうに成の事を見つめていた。


「クソが……変な事に気付いてんじゃねぇよ。ポンコツロボットが」


里佳子の性格だ。今すぐにでも成に本当の事を確かめたいだろうに、それをしないで拳を握り締めて立ち尽くしている。


それが出来ないのは、恐らくテスト勉強の時の事があるからだろう。


自分の事を話すのを拒否し、柔らかく牽制した成のあの顔を、あの声を里佳子も気にしているのだ。


「情ねぇ。アタシはいつだって無力でちっぽけだ。ダチの助け一つ出来やしねぇなんて」


そんな事は無い、と言ってあげられない自分が情けなく、腹が立った。


自分ばかりが何かを抱えて生きている訳ではない。大切な友人が出来た事で、ようやく目の前の事が見えて来た気がする。


私は別の世界に住んでいるだなんて勝手に自分で彼等に線引きし、自分だけが背負い切れない物を引き摺りながら生きていると、勝手に悲観していた愚か者なのだ。
< 193 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop