【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
冬の季節は過ぎ行く時間が早く感じる。それは日が昇り沈むスパンが短いからだと何かの本で読んだことがある。
「じゃあ、明後日に。笑里、心の準備は出来ているか?……俺は、正直言うとまだ半分」
「私も、です。それらを背負わなければいけないと分かっているのに、まだ決心が着いたとは言い切れません。情ないですが」
あの日、微かな異変を見せた成はそれを何でも無かったかのように風化させ、何でも無かったと主張するように、右耳にピアスの穴を一つ開けていた。
クラスメイト達は、耳掃除ではなく実はこのピアスの穴を開ける作業に失敗して耳を痛めたのでは、なんて噂をしていたが、そうじゃない暗い真実が潜んでいるのを、成以外の私達四人は言葉にするでもなく共有している。
「もう成一人に、君と私二人分の重荷を背負わせたりしません。だから、決心が着いていなくとも私は……」
「こら、違うでしょう?」
どうしても、独りで先を急ぎたがる私に静止をかけたのは燭で、彼の手は優しく私の頭をぽふりと叩くと、成のシルバーの丸が着いた耳たぶへと伸び、そのシルバーの丸を摘んだ。
「背負うのは、ここにいる全員で分担。俺のももう背負ってもらったから、こっちは余力が有る。笑里ちゃんのも、成のもね」
「……あちゃー、やっぱり隠せて無かったか」
燭の穏やかで一定の低音が、成の顔にくしゃくしゃの苦笑いを浮かべさせる。
鼻を掠めたのは、冬の香り。長い冬を、超えるのが遠い遠い、そんな香り。