【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
終業式も終わり、里佳子と燭は駅へ、成はバス停へとそれぞれ分かれ、私とルイは二人歩いて家路へ着く。


口だけじゃなく、本当に真実と向き合う日が迫ってる。背負う重荷が増える日が。


「エミリ、後悔しているの?」


私の考えている事を見抜いたルイが、長身に造られた身体を折り曲げて問い掛けてくる。


上手く答えられない。それは知らなければならない事だと言うのが分かっていても、知りたいと渇望出来ないのだ。その感情が戻らないから、私は知らなければならないと暗示をかけることしか出来ない。


ルイは大きな瞳を瞼の中に隠し、光を細める。陽だまりに溶けたような色。天然石みたいな茶色が、本物の眼球よりも本物みたいに生命の息吹を放つ。


「上手く答えられなくて良いんだよ。答えられない事こそ、キミが心を取り戻している証拠だから、それで良いんだ」


まるで、私の存在そのものを肯定してくれているような温かな声と、瞼の奥の茶色から零れる光。


「多分、君がいるからです。君がいるから笑えるようになった。怒れるようになった。胸の痛みも、温度も、鼓動も、全部、全部」


ルイが現れなければ私はきっとあのままだったのだ。だから知る事をまだ渇望出来なくとも、強い暗示をかけて知らなければ、とは思えるようになったんだ。
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