【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
家へ帰り着くと、疲れがどっと押し寄せて、急に身体がだるく重く、熱を帯びているような気がしてリビングのフロアへとへたり込んでしまう。


一つの節目を迎え、これから心と身体を労働させる事になるのが分かっているからだろうか。心が不充分な分、身体に負荷をかけていたようだ。


先に手を洗い紅茶の準備をしていたルイは、すぐに私の元へと駆け寄り私の口に人差し指を突っ込む。


「サーモグラフ急上昇、体温三十八度五分、一般的にも笑里の平熱を考えても芳しくない数値だね」


「計らずとも分かります……ルイの指はどうなってるのですか」


ヒューマノイドロボットらし過ぎる対応に思わず突っ込んでしまったが、その返しをするのも労力が必要で、ついでに顔を上げている事すら億劫である。


ルイの胸に頭を預けると、ルイの適温の気持ち良い温度が耳に当たる。けれど、人にはあってルイには存在しない心臓の音に気付き、やるせない気持ちが押し寄せた。


良く出来ていても、心を持ち始めてもルイは人ではなくロボットなのだ。そんなこと、今更分かりきっていると言うのに。


「とりあえずベッドに横にしよう」


細いフォルムで、まるで軽い荷物を持ち上げるように私を抱き上げて歩き出すルイ。


それすらルイがヒューマノイドロボットだと言っているように思えて、やるせない気持ちからモヤモヤと黒い物が立ち込めたような、そんな気がした。
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