【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
微動だにしない私の頬を優しく円い動きを指先で作り撫でる彼。


救いの神様だと、そう思った。だけど、この神様を知らない筈なのに、私は知っている。


「見た事ねーくらい綺麗な顔。なのに、お前にはなーんも無いんだな。毎日会いに来れば、笑ってくれる?それとも怒ってくれる?泣いてくれる?……どれでも良いから、見せてよ」


声変わりしてない、知らない少年の声なのに、見知ったあの声と同じ音の出し方。


指も、腕も、顔も痣と怪我だらけなのに、どうして君はそんな太陽みたいな顔で笑って、涙を零しているの?


「成……君、成なんでしょう?成、な、る」


傷だらけの神様は、私の見知った顔よりもずっと小さく幼いし、声も高くて別物なのに、確かに成だった。


だけど、箱の中に彩をもたらした神様に私の声は届かない。


この変な夢はただの夢?こんなに鮮明だというのに。


「ああ、俺が怒れる人なら良かったのに。お前から全部を奪った人に、感情を捨てたお前自身にも。だけど、ごめんね。泣いてやる事しか出来ねぇ」


幼いけど、太陽みたいに笑う顔も、悲しい色を滲ませてぐしゃぐしゃに泣く顔も、何も変わらない。


誰でもない誰かに再度問いたい。これは、私が見る夢は、ただの夢なのだろうか、と。
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