【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜



熱は、一晩寝ても下がる事が無かった。身体はけだるいがインフルエンザかもしれないから病院に検査に行かなければならないくらいに、熱が身体から放出されている。


「これは、明日の成達との約束、無理だね」


もし本当にインフルエンザなら生身の人間が看病は無理だが、こういう時ヒューマノイドロボットのルイだとその心配は無いなんて思ってしまう自分の、胸の奥が少し痛い。


私の頭の上に冷やしたタオルを置いたルイは、何故か着けていたエプロンのポケットからスマホを取り出して耳にあてがう。


「もしもしアカリ?ちょっと相談があるんたけど……」


電話の相手はどうやら燭のよう。私達五人は傍から見れば成がリーダーだが、計画の実権を握っているのは実は燭だと思う。それをルイも見抜いているのか、遠回りせず直接燭に連絡する辺り、やはりルイは賢い。


「ん?何が丁度良いの?……うん、うん、え……ナルが?」


ルイの精密なハイトーンボイスが微かに揺らぐのが分かった。何かあったのだろう。意識の上っ面に聞こえた会話からして、成の身に。


真っ白な箱の中での幼い彼の姿が目に浮かんだ。こんな嫌な予感、消えろ、消えろ。


真っ白な箱、部分的に白に犯されるように顔や身体に張り巡らされたガーゼ。ガーゼがかかってない所にも、作りたての青痣、古傷の黄色くなった痣を持った幼い神様。


あの真っ白な箱の中の出来事と記憶が混同して嫌な思想が螺旋状になってぐるぐると脳内を駆け巡る。


ただの嫌な予感済んでよ。体調不良の熱で溶けてしまいそうな脳が見せる、夢の続きで終わってよ。
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