【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「ナルと連絡が一切取れない。アカリとの電話の後にボクも連絡してみたけど、出来ない」


いつもならそんなに心配する事でない出来事かも知れないけれど、これから重要な役割があるのに成に限って連絡を返さないのは、充分心配する事に値するだろう。


「この間からの成の状況を見ても放ってはおけないから、夕方に成の自宅に行こうとリカコからさっき連絡が来たんだ。場所はアカリが調査済み。あと、彼の身辺は君の診察の待ち時間にボクがそれとなく」


待ち時間、瞬きもせずに黙っているとは思っていたが、まさかそんな事になっているとは思いもしなかった。


「正直、今ボクの口からそれを話す事は出来ないくらいに彼の身辺はまずい。だから強引かも知れないけど夕方にナルのところに行くよ」


ルイは成の何を知ったと言うのだろうか。ヒューマノイドロボットのルイが、苦々しい感情を剥き出しにした表情をしている。


「ボクはプログラムに沿っていない事を今から言うよ。これはボクの意思だ。心だ。ボクはキミを救いたい。そして、ナルの事も……」


そもそも組み込まれたスペック以上の想いがルイを支配して、そして私にまで伝う。


救いたいと願う想いは、私に未だ戻らぬ『未来を望む』感情だ。大切だと思う人を助けたいという彼自身の渇望なのだ。
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