【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
私が取り戻すより先に、救いたいと、強く願い『望み』を手に入れたルイは、その強い想いに戸惑いながらも身を委ねている。


「私も、行きます」


「ダメだ。キミは体調が悪いじゃないか」


「それでも行きます。連れて行ってくれないと言うなら、単独で動きますが」


もう逃げない。私の罪からも、今の大切な人からも。


どんな理詰めでルイに説得されてもこの想いは変えないと目を逸らさずに念を送ると、ルイは観念したかのように私の額に掌を乗せた。


「ボクの最優先事項はエミリだって事、忘れないで。キミの身体がまずいと判断した時は、向こうでどんな事態になっていても、嫌がっても君を連れて帰る。良いね?」


これはルイにプログラムされているから発せられた言葉なのだろう。けれど、分かっていても私は嬉しかった。


私を見つめる眼差しが、触れた手の温もりが、そして、触れたせいで零れるそれが、ルイの心の物だと思えるから。


持っている数少ない感情では嬉しいしか表せないのが残念だが、その想いが伝わるように、精一杯下手くそな微笑みをルイに向けた。
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