【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
バスに揺られて二十分程の、高級住宅街の一等地に成の家は在るらしい。
「どことなくアタシとタイプ違う上品なバカだとは思ってたけどアイツ、おぼっちゃまなんだなぁ」
里佳子は短髪の上に被った赤いニット帽のポンポンをやわやわと弄りながらボソリと呟いた。
「ナルの父親は精神科医の権威みたいでね。主に警察絡みの精神的な医療施設で診察しているんだって」
「成程、だから性格のわりに制服とかはきっちり着てたり食べ方綺麗だったり、あと妙に頭が切れて理系男子なのも頷ける」
私がこれまで成をちゃんと見て来なかったから気づかなかった事。その些細な成の事を、里佳子や燭はしっかり見ていたのを、改めて知る。
「詳しくは本人から聞くべきだと思うからあまり調べた事は話さないけど、家族構成は父親と母親、それから年の離れた兄がいるみたい」
ルイは自らのスーパーコンピュータで調べ上げた成の事について、核心に触れぬよう語り出す。
「今回の件に繋がるかどうか分からないけれど……二年と少し前、兄が刑事事件を起こしているんだよ。かなりの事件だったけれど色んな事情が絡み合って、未成年だったのもあり服役のみ。その事件にナルは深く関わっていて、彼は二年程前、父親の務める病院に二ヶ月入院しているんだ」
その、掻い摘んで提示された情報で、引っ掛かりがあるのは二点。
兄の犯した事件と、このところの成の事、そして今の事にどんな関わりがあるか。これは聡明な燭も、自頭の良い里佳子も気付いて考えているところだろう。
そしてもう一点は私個人が気になった部分。二年と少し前、成が深く関わったという事件や入院の一件は、私が母を殺した罪のあの日と時期が被っているのだ。
「どことなくアタシとタイプ違う上品なバカだとは思ってたけどアイツ、おぼっちゃまなんだなぁ」
里佳子は短髪の上に被った赤いニット帽のポンポンをやわやわと弄りながらボソリと呟いた。
「ナルの父親は精神科医の権威みたいでね。主に警察絡みの精神的な医療施設で診察しているんだって」
「成程、だから性格のわりに制服とかはきっちり着てたり食べ方綺麗だったり、あと妙に頭が切れて理系男子なのも頷ける」
私がこれまで成をちゃんと見て来なかったから気づかなかった事。その些細な成の事を、里佳子や燭はしっかり見ていたのを、改めて知る。
「詳しくは本人から聞くべきだと思うからあまり調べた事は話さないけど、家族構成は父親と母親、それから年の離れた兄がいるみたい」
ルイは自らのスーパーコンピュータで調べ上げた成の事について、核心に触れぬよう語り出す。
「今回の件に繋がるかどうか分からないけれど……二年と少し前、兄が刑事事件を起こしているんだよ。かなりの事件だったけれど色んな事情が絡み合って、未成年だったのもあり服役のみ。その事件にナルは深く関わっていて、彼は二年程前、父親の務める病院に二ヶ月入院しているんだ」
その、掻い摘んで提示された情報で、引っ掛かりがあるのは二点。
兄の犯した事件と、このところの成の事、そして今の事にどんな関わりがあるか。これは聡明な燭も、自頭の良い里佳子も気付いて考えているところだろう。
そしてもう一点は私個人が気になった部分。二年と少し前、成が深く関わったという事件や入院の一件は、私が母を殺した罪のあの日と時期が被っているのだ。