【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
息が詰まる。呼吸が上手く出来ない。


自然と肩で息をしていた私を後ろに引っ張ったのはルイ。泣かない為か、コートを摘んで触れるか触れないかのところに引き寄せたルイもまた、苦しそうな顔をしている。


「すみません、彼女体調が優れないので出直します」


「ルイ、ちょ……」


この白い箱の中に入れば成の様子を探れる好機。それを棒に振るう言葉に里佳子が思わず振り向いた。


しかし、私達の顔色を見て言葉を止める。今、私達の中だけで大変な事が起きているんだと察知して、牽制の言葉を止めたのだと思う。


母の顔が浮かんだから何だ、罪を犯したのは私の方で、現実この人は成の母親で、何か起きる訳でも無いのに、里佳子は私やルイを優先しようとしてくれてている。


「そう、それじゃあ成にお友達が来てくれたことを伝えておくわ」


成の母親は変わらず人当たりの良い、だけどもぺっとりとした笑顔を顔に貼り付け、また白い箱の奥へと遠ざかる。


「はー!何か、凄く疲れた」


それを見送った後、一番最初に声を上げたのは燭だった。言葉通り、見えない重圧から開放された燭は、だらりと長い腕から力を抜き、いつもしゃっきり伸ばした背筋を丸めいる。
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