【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「何だろう、全身から拒否られてるあの感じ。成と同じ顔なのに、全然顔が笑ってない」


代表で話していた燭は、一番近くであの人と接触したのだ。伸し掛る重圧は私達の比では無かっただろう。


「……で、お前らは一体どうしたんだよ」


珍しくずっと黙っていた里佳子が、こちらも珍しく静かに怒っていた。あの母親のところから成を救えなかった怒り。けれど私やルイの異変から強行出来なかったから悔しさが滲んでいる。


「じ、実は……」


「あの人、エミリの母親に似ていたんだ。見た目の話じゃなくて、あの雰囲気、あの笑い方がね」


言わなくては、と思い整わぬ息のまま何とか言葉を紡ごうとした時、迷わす変わりに話し始めたルイ。


優しかった筈の母に見た目がダブるなんておかしい事なのに、母を知らない筈のルイが、何故そんなことを言うのだろう。


父に写真を見せられていたとしても、それはに気付くなんておかしい。でも、私のコートを引っ張る手から伝わるルイの震えが、ルイもそう思った事が真実だと物語っている。
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