【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「じゃあ、行ってくる」


「行ってくるってまさか、ルイ!?」


その機能に感心している間に、ルイの視線は白い箱の方へ。ルイが何をしようとしているのか燭が察したのは行動に出た一歩後。


「無茶苦茶だよ、ルイ……」


「諦めろ燭。アイツはたまに頭が硬くなる。まぁロボットだから柔らかい時なんて無いだろうが」


あの高く私達を阻んでいた白い壁を、ルイは何でもないように飛び込んで行ってしまった。


よくよく考えれば修学旅行の時、私と里佳子ごとあの崖をひとっ飛びしたルイの能力を考えれば、こんな事造作もないのだろうが。


「建物内に熱は二つ。一階の小さな物はおそらくナルの母親だから、二階の横たわっているのがナルだね」


タブレットのマイクから、ルイの見ている景色と共に音声アナウンスのような機械的なルイのハイトーンボイスが流れてくる。


ルイの言う通り、景色からグラフィックに切り替わったモニター画面には、二つの人型の赤がある。おそらくこれがたまにルイが言うサーモグラフィーの指数の映像だ。


「うお、ルイの声がした!それに、ホントにルイが見てる通りに映ってる。何だコレ、凄すぎだろ」


あまりに非現実的な映像に、里佳子が声をうわづらせた。ルイは、いつもこんなに非現実的な映像を切り替えながら見ているのかと、私も声に出さずとも驚いている。
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