【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
開いている。窓の鍵が、ロック部分に引っ掛からなぬ状態のままになっているのだ。
「入るよ、ナル」
その問に変わらず返事は無い。ルイの手が躊躇いがちに窓枠に触れ、片方の窓をカーテンごと左に引いた。
白い箱の中は、成の部屋だとは思えぬくらいに小綺麗な状態だと、失礼ながら思ってしまうくらいにきっちりと片づいている。
左側には木製の帽子掛けには上質な帽子達が飾られ、シンプルな物の少ない部屋の数少ないインテリアとして彩れ、その傍らにウォークインクローゼットがあり、すぐ横にコートの数種類掛かったラックと手前にはきっちり手入れされた制服とアイロンが並ぶ部屋。
その部屋の右に、抹茶色の毛布が丸く膨らんだベッドが存在していた。
足音を立てずにそこに歩んだルイは、抹茶色の布団をすっぽり被った丸みに、そっと触れる。
「ナル、起きて。ねぇ、寝ているの?」
左右に揺れる丸い個体は尚、反応しない。何故?まるで、意識が無いように動かないそれに、肌が粟立つ。
「ナル、ナル」と何度も名を呼ぶルイ。里佳子と燭もそっと彼の名を呟く。
反応の無い丸い個体は、ルイの齎す緩やかな振動に遂に、本体の一部の腕をだらりと現す。
「……ひっ!」
そのルイの目から映る画面上の映像に、里佳子が喉を鳴らした。
抹茶色の毛布から現れたその腕は、力無くだらりと垂れたまま。
無数の消えない黄ばんだシミと、真新しい赤黒い傷跡と腫れを帯びた、ショッキングな腕。
「入るよ、ナル」
その問に変わらず返事は無い。ルイの手が躊躇いがちに窓枠に触れ、片方の窓をカーテンごと左に引いた。
白い箱の中は、成の部屋だとは思えぬくらいに小綺麗な状態だと、失礼ながら思ってしまうくらいにきっちりと片づいている。
左側には木製の帽子掛けには上質な帽子達が飾られ、シンプルな物の少ない部屋の数少ないインテリアとして彩れ、その傍らにウォークインクローゼットがあり、すぐ横にコートの数種類掛かったラックと手前にはきっちり手入れされた制服とアイロンが並ぶ部屋。
その部屋の右に、抹茶色の毛布が丸く膨らんだベッドが存在していた。
足音を立てずにそこに歩んだルイは、抹茶色の布団をすっぽり被った丸みに、そっと触れる。
「ナル、起きて。ねぇ、寝ているの?」
左右に揺れる丸い個体は尚、反応しない。何故?まるで、意識が無いように動かないそれに、肌が粟立つ。
「ナル、ナル」と何度も名を呼ぶルイ。里佳子と燭もそっと彼の名を呟く。
反応の無い丸い個体は、ルイの齎す緩やかな振動に遂に、本体の一部の腕をだらりと現す。
「……ひっ!」
そのルイの目から映る画面上の映像に、里佳子が喉を鳴らした。
抹茶色の毛布から現れたその腕は、力無くだらりと垂れたまま。
無数の消えない黄ばんだシミと、真新しい赤黒い傷跡と腫れを帯びた、ショッキングな腕。