【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
愛情ジオラマ
久しく使っていなかった客室を、ラボに篭っていた父親に手伝わせ使えるようにし全員でそこに立てこもり明かした夜。
気付けば眠りに落ちており、重たい瞼を開くと里佳子と燭もベッドに伏せまだ寝ていた。
「おはよう……笑里」
微睡みの中、鮮やかな色のシャボン玉が、私の周りを飛び交う。
窓の外から降り注ぐ朝日に照らされ、傷だらけの神様はあの日の夢のように、泣きながら微笑んでいた。
「皆で助けてくれたんだって?ルイから聞い……ぷ!」
良かった。何事も無く喋ってる。息をしているし、ちゃんと泣いて、笑ってる。
飛びついた私に驚いて成が固まっているのが分かった。自分でも大胆な事をしたなと頭の片隅で思っているが、どうしても止まらない。
「成、ずっと苦しかったですね。独りで泣いて無理して笑って、でも怒り方を忘れて。それでも、一番苦しい思い出を私の為に話そうとしてくれて、私の側にいてくれたんですね」
あの日の夢は夢じゃない。独りぼっちのふりをしていた私に、傷だらけの神様はずっと寄り添っていたんだね。
成の手が、震えながら私の肩に触れ、そっと私の身体を離した。
成の透き通った黒目がじっと私を見て、透き通るあまり私を瞳の中に閉じ込めているみたい。
「思い出したの?二年前の事」
「いいえ。けれど、夢で見ました。白い箱の中、幼い君が私の為に泣いてくれた夢を」
あれはきっと夢じゃなく、私の記憶。本能的にそう感じる。そして、あの夢以外の夢もまた。