【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
成を風呂場へ押し込んだルイは、あれよあれよと言わんばかりに自分の服を取り出したりタオルを準備し、客室のベッドメイキングもこなした後、リビングにいた私に紅茶を差し出す。
「大丈夫?エミリ」
大丈夫、という言葉には色んな意味が含まれている気がした。成の話を聞いた私の心情、そして、その話の中に含まれたであろう私の真実への鍵。
混乱している私を落ち着ける為に用意されたオレンジピールの香りは、ルイの思惑通り私の心までもを柔らかく座らせる。
「少しだけ、混乱しています。成の話の中に見出した私の真実が怖い。数時間後、それが本物になるのも、怖い……」
不思議だ。ルイになら私は思う事をさらけ出す事が簡単に出来るのだから。
これまで断片的に見て来た身に覚えのない夢、成の話、その全てを総合的に頭の中で纏めれば纏める程、真実の残酷さが胸に突き刺さる。
同時に、私の残されていた穏やかな記憶が偽物だったのかも知れないと思うと、知る事が怖くなる。それでも、知らなければならないのに。