【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
ルイは私の想いを読み取ろうとするように、透き通る瞳で私の目を覗いた。


「エミリ、エミリは真実を『知らなきゃいけない事』だと思って苦しんでいるね?でも、それはエミリの心からの『知りたい』という渇望じゃない。それなら、ボクはエミリが真実を知る必要性は無いと思う」


意外な言葉だと思った。ルイは私が真実と向き合う事に固執していると思っていた。ルイはその為に造り出されたとさえ思っていたのに。


そんな想いまでもを全て汲み取る柔らかく美しい、天然石のような瞳。


その瞳は私を捕らえて離さぬまま、ルイは私の頬を壊れ物を扱うように包み込んだ。


美しい瞳からポロポロと宝物が零れ落ちるのが至近距離でも分かる。その宝物は、成の言う通り零してしまうには勿体無いような気さえしてしまう。


「キミの思う通り、ボクの出生理由の一つにはキミの記憶を取り戻すというプログラムがあるんだ。けどね、ボクには心が持てるようになっている。芽生えたボクの心は、キミが笑顔でいる事を願っている。キミの、事が……」


言葉を紡ぎ出す途中、ルイは音を立てて目を閉じて、やがて力が落ちて行く。
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