【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
ああまた夢の中だ。ぼんやりと、そう思った。
ただ、いつもと違うのは、これまで私は今の私としてその夢を傍観していたのに、今の夢は何か視界がカメラのように機械的。
砂嵐のようなザラザラのフィルターのかかった視界の先では、前回のように空っぽな少しだけ幼い私と、白衣を着たマッチ棒のようにやせ細った男の人が対面で話をしている。
「君の名前と年齢は?」
「水原、笑里です。年齢は十四歳、中学三年生です」
名乗った少女の名は、母の性をまだ持っていた頃の私。やはり、これは夢であって夢でない。
「意識は正常みたいだ、良かった。じゃあ、辛いかもしれないけれど、何が起きたかは分かるかな?」
幼い私に向かい合うその男の人は、誰かに似ているような気がする。その、音の出し方は心地良いのに彩で溢れている。
その声を聞いた幼い私は、虚ろな目でぎょろりと男の人を見た。何の感情もない、ただ息をするだけの生命体に、ゾッとする。
ほんの少し前の自分だと言うのに、随分変わったものだ。それが当たり前だった筈なのに。