【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「成、私、夢を見ました。多分、君のお父さんと話している夢。……君と同じ喋り方で、君と同じ悲しい色で笑う人ですね。……君は、お父さん似です」


姿形は成を傷付けるあの人に似ているけれど、確かに夢の中の彩で溢れた彼は、成にそっくりだった。


成は私の言葉を聞くと、くしゃりと顔のパーツを中心に寄せて笑った。どうしようもなく嬉しい小さな子供のような、そんな顔で。


「やっぱり、笑里は俺の神様だ。俺の希望だ。辛くて、感情を押し込めて抜け殻になったお前だったとしても、生きていてくれて、俺を大切だと思ってくれて、ありがとう」


「何を言っているんですか。成の方が、神様なんです。ずっと色々捨てていた私の全部を、君は傷付きながら拾ってくれていたじゃないですか」


耳を塞ぎたくなるような恥ずかしい言葉達が、成と二人になると素直に言える。


そんな素直な言葉に子犬のように勢い良く頭を横に振った成は、今一度、微笑む。


この、唇の近くまで伸びる程の深い笑窪を持った神様は、こんなに彩に満ちているのにどこまでも透明で、不思議な色。


「笑里、皆が戻って来るまでに、本題の前に、少しだけ昔話をしよう。俺と、俺の守りたかった儚い神様の話」


言葉を発すだけで、世界が彩る神様の声に、色に、私はそっと頷いて目を閉じる。


深い罪に溺れそうな私を拾う神様の、穏やかな神話に少しだけ身を投じよう。
< 242 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop