【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
私が初めて成と出会ったと思っていた高校二年の春、ほんの数ヶ月前のあの時も、成の眩しい色に目を奪われたっけ。


「来る日も来る日も話しかけても返事の無かったあの時、俺が先に退院してから一年くらい経って偶然同じ高校の同じクラスに笑里を見つけた時の感情は、何て言っていいのか分かんないよ」


あの教室で成と初めて顔を合わせた時……正確には、白い箱での出来事を忘れていたから再会の時、私も良く覚えている。


「退院してからもずっと、お前を忘れた事はなかったよ。それで……ああ、思い出すと恥ずかしなぁ」


「ふふっ、あの時は『何この人』って思いましたけど、あの言葉の意味が今なら分かる」


あの日、旧姓から父の姓である『片岡』に名前が変わっていた私の隣、名簿順で私斜め後ろに座ったのは姓が『嶋山』である成だった。


あの狭く小さな世界が別世界だと拒絶しきって孤立していた私の肩を、何の突拍子もなく、それも躊躇いなく引っ掴んで自分の方を向かせた成は、今にも泣き出しそうに顔をぎゅっと寄せて、震える声で言ったんだ。
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