【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
笑う私に困惑してあわあわと挙動不審に首を動かす成。穏やかな空気の中、ノックも無しに部屋の扉が開く。


「……状況が読み取れないんだけど。解析、不可能」


「だよな。俺も良くわかんないのに、今来たルイに把握出来るとは思えないよ」


現れたのは充電完了したルイで、ヒューマノイドロボットらしい発言も健在。良かった。ちゃんと元通りだ。


「リカコとアカリ、最寄り駅まで着いたって。もうすぐこっちに戻って来れるみたい。二人共、心と身体は大丈夫?」


最後のはルイに芽生えた『心』の言葉。機械的な物じゃなくて、彼だけの心の。


傍にいてくれたルイの為にも、ルイを与えてくれた父の為にも、ずっと見守ってくれた成の為にも、受け入れてくれた里佳子や燭の為にも、そして、私自身の為にも……。


「ルイ、私は全部『知りたい』です。その全てをちゃんと『思い出したい』し『受け止めたい』です」


言葉不足かも知れないけれど、きっとルイには私の想いが届いた筈。私の感情が戻っている事が伝わった筈。


だって、私の足りない事だらけのその言葉で、華やぐような笑顔を見せてくれている。
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