【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
食卓に並ぶ里佳子と燭のお土産のおかずは、ルイの作る完璧な料理とは違う心がホッと落ち着くような味。


力が抜けて、初めて食べる味なのにどこか懐かしい温かさが舌を駆け巡るよう。


「たまにはこういうモンも良いべ?アタシや燭は慣れた味だけどさ、お前達は慣れてねーだろうからな」


「うん。凄く美味しい。相手の為に作った味がする。心が美味しいって言ってるみたい。胸が熱い」


その純粋な言葉により、修学旅行での食事以外で、思えばルイは自らがデータ収集して習得した料理しか食べた事が無かった事に気付かされる。


味覚というものを機械的にとはいえ楽しむ事が出来るルイは、外食もこれまでその時以外にした事が無い。私が休日に外に出ないのもあるしルイもラボで父の手伝いや研究の為に協力しているというのも一つ、要因になるだろう。


一段落着いたら、ルイと外食をしよう。こんなに幸せそうに食べるルイをこれで見ていなかったなんて、勿体ない他無い。


「この煮物と唐揚げ、ボクも作れるようになりたいな」


「ははは、お母さんもリカちゃんのとこのおばさんもきっと喜ぶよ」


「そうだな!今度アタシらのとこに泊まりに来いよ!アタシん家大家族だから大変かもだけどさ、家だけは広いから」


ルイはただのヒューマノイドロボットじゃないのだ。心を持った一つの生命体であり、ルイという一つの存在。
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