【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「へえ、習い事なんて見かけによらないね。アカリは何を習っているの?」


私が思っていた疑問を、ルイは遠慮無くずけずけと尋ねる。


ルイにとって質問することは人間社会を学ぶうえで手っ取り早い事らしく、興味があるとかそういった人間らしい感情からでは無いようだけれど。


「ん?ああ、俺がやってるのは流鏑馬だよ。今度鎌倉の収穫祭に参加させて貰うから、その為に今日は馬術の稽古なんだ」


「楠本って案外凛々しいのな。スゲー。カッコイー」


運動はわりかし得意な方の癖に帰宅部で特に勉強が出来るわけでも無い嶋山成は、楠本燭の言葉に心底素直に感心しているみたいだ。


「じゃあそのお稽古事にでも何でも、さっさと行けば?さいならー」


しかし、こういった事には嶋山成同様興味を示すと思っていた御堂里佳子の方は、全く興味を示さない。


いや、正確に言うと、わざとらしいくらいに楠本燭を見てないような、そんな感じ。


「言われなくてもそうするよ。じゃあ、さようなら」


それに対しての楠本燭の返答も、何だかイライラしているような、そんな語尾の伸び方。


顔だって、無表情を装っているつもりだが失敗していて、実際は悲しそうな、そういう微妙な顔をしている。


全く接点の無いと思っていたこの二人だけど、実は何かあるのだろうと、相当察しが悪いタイプでなければ気付かざるを得ない。


考えたところで、そうであろうが無かろうが、私には関係の無い話なのだけど。
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