【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
ルイを人間臭いと思うのはもう何度目だろう。思う度、思う度、ルイが遠くなる。独りになるのが怖くなる。


おかしいな。私は独りをもう求めていない筈なのに。傍には、ルイも、成も、里佳子も燭もいるのに。


どう足掻いても付き纏う闇に、独りズルズルと取り残されてしまいそう。ルイ、傍にいてよ、置いて行かないでよ、と幼い私が胸の奥のそこで叫ぶ。


『……嫌っ!私の……にっ!ーーで!』


「……っ!」


叫ぶ。幼い私が守る為に、叫ぶ。付き纏う闇から彼を守る為に、喉を揺らして、感情を撒き散らして、叫ぶ。


いつか、こんな夢を見た気がするが、その時よりもより鮮明に、脳裏に映像が駆け巡る。


付き纏う闇は、狂気に満ちた母の影。


左手には鋭利な刃……肉切りバサミだろうか。もう片手では私の首を絞め、握った刃は私の胸の内側ごと、古びたロボットを狙っている。


身動きの取れない私は振り下ろされる刃を前に、咄嗟に背中に彼を捩じ込んで……。


「笑里!?おい!お前どうした!?」


「はっ……り、かこ」


気が付けば私は地面に崩れ落ち、尋常じゃない量の汗をかきながら荒いテンポで呼吸をしていた。


「私、今……刺される、瞬間を」


言葉にならない。でも、記憶と現実の狭間で手を仰げば、そこにはその時とは姿形は違えど、心配そうに私を見つめる彼が生きている。
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