【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
ああ、君が傍にいる。君が笑う、君が泣く。


縋るように頬に触れれば、困ったように涙をひと雫、ふた雫とポロポロ落とすルイに、胸が詰まる。込み上げて、吐き気と眩暈がする程にそれは溢れるのに、嫌じゃない。


「もう少し……後少しで思い出す。思い出す事が私の罪への償いだと思ってたけれど違いました。本当は、私が思い出したい。君と過ごした想いを、日々を」


「うん。……焦らないで。キミが思い出すまでちゃんと傍にいる。置いて行かないから。ボクはここにいる」


君との日々を、思い出せない事が一番の罪であり罰だとやっと気付けた。


早く、早くと焦れる想いはルイの零す雫によって浄化され、私を急かすのを止める。


「ルイ、お願いします。約束。ちゃんと傍にいて下さい」


「……うん、約束」


そっと抱き締めるルイの腕はやはりロボットだとは思えないくらいに柔らかくて温かくて、あの頃よりも広い。


それでも、あの頃と変わらない『傍にいる』のその言葉に、泣けない私の変わりにとめどなく涙を零すルイ。


父が幼い私を親権争いで負けて手放した幼い日、私に託した小さなロボットは、多分、あの頃からルイで、ルイの心を持っていたのだ。
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