【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜



男子の方の試合が先に始まった頃、ようやく気持ちも身体も落ち着き出す。


「なぁ、つまり、アイツは笑里のオトンが作ったロボットから派生して出来たモンって事?」


「ええ、おそらく。ルイ本人がそうだと断言した訳ではありませんが、発言を考えれば確定だと思います」


そうすれば辻褄が合う。あの頃の小さなロボットはずっと私の傍にいた。つまり、あのロボットに何らかの機能があって私の起きていた事を記憶していたとする、それがルイの元になり、私の記憶を共有していたとしよう。


ルイの機能はおそらく全部は一生掛かっても理解出来ないだろうが、ルイはその映像を寝ている私の脳に流して、夢へと具現化させたのだ。


私が夢を見る時必ずルイがいる事も、過去について含んだ言い回しをしてた事も、あの懐かしい感じも、全部のピースが繋がる。


「しかし……アイツの内部のHDDはどうなってんだ?そんな何年もの記憶を鮮明に持っていて、あのスペックで……いや、待てよ」


珍しくぶつぶつと難しい言葉を並べた里佳子は、何やらはっとしたかと思えば、みるみるうちに顔を青くして行く。


「里佳子?どうしたのですか?」


「……すまん。今の笑里にはちょっと言えない事に気付いた。本人にちゃんと聞いてから、お前にも話すから待って」


いつも直球勝負の里佳子が、慎重に言葉を選ぶ事が不安を煽る。


里佳子は私達の中では機械に強い方だ。Web関係の仕事に就きたいと言っているくらいには。


おそらくさっきのぶつぶつと呟いていた事は、パソコンの中身の事を指しているのだと思う。
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