【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
バレーボール部のいない私達のクラスの男子チームだが、成を始め、運動の得意な人間が集まっているのにルイがいるから、楽々と勝ってしまった。


確かに、私は心配し過ぎなのかもしれない。ルイが生きている。今をあんなに楽しそうに。それで充分じゃないか。


「笑里、体はもう大丈夫か?アタシらの試合も始まるけど」


「平気です。行きましょう」


だから、ルイが生まれるきっかけになった過去も、これから生きる未来も、大切にしたい。大切な人達と大切に扱いたい。


努力して来なかった事も、これから頑張る。自分で捨ててきた何かを自分で拾い、人が零した何かも拾えるように。


そう決めたのに、なのに、運命は嫌な運命を辿り、共鳴し始める。


「……ルイ!ちょっと、急にどうしたんだ!」


遠くで燭の低いけどいつもより高い声が、嫌に響いている。


目の前の色が褪せる。じわじわと、共鳴して発生した無色の抗えない嫌な運命に侵蝕されて。
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