【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
この瞳がどうか私みたいに濁ってしまわぬようにと願う事がせめてもの救いであり、私の犯した罪への償いなんだ。


「……片岡?」


覗き込む彼の視線は余りに綺麗で、映る私の瞳は汚いのだと思い知らされる。


「別に、どうとも思いません。転校生が来る、それだけでしょう?」


そう言って再び爆音の世界に戻り今の世界に蓋をすれば、少し太いキリリとした眉毛を、垂れ目がちな瞳と並行するように下げた嶋山成。



けれど、他のクラスメイトに呼びかけられたらしい嶋山君成、手を挙げて私に挨拶し、やがてその輪の中へと馴染んで行った。


構わなくても良い。彼には私が失ったそれが輝かしい世界の下の方がずっとずっと似合っている。


私はそれを失った。いや、意図的に捨てたと言った方が正しいのかもしれない。


でも、人が必要としているそれは、私にとって必要が無かっただけ。だから、失った事をどうだと思う事は無い。
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