【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「別に、何でも無いし。何でアタシと燭が何かある訳?あんなの、ただのクラスのクソ地味男だろ」


「アカリの脈拍と瞳はそう言ってなかったよ。キミのもね。それに、キミの特性上何でもない相手を下の名前で呼んだりしないでしょう?」


ルイの分析は、言葉通りに機械的で、あまりにも的確だった。


私と同じ苗字のルイは当たり前のように皆に名前で呼ばれているけれど、それ以外でそれ程仲良くない人間を、御堂里佳子は名前で呼んだりはしない。


私の事も『片岡』と呼ぶし、そこそこに仲の良い筈の嶋山成の事だって『嶋山』と呼ぶのに、今、楠本燭の事は『燭』と名前で呼んでいた。


正当な事を言われ、御堂里佳子はキツイ顔を更に歪めて唇を震わせ、前下がりショートの奥に隠したツーブロック部分を落ち着きなく触っている。


目線を逸らそうとする御堂里佳子を逃さない、ルイの不思議な瞳の色。


……私にだって、詮索されたくない事はある。だから、御堂里佳子のその動きが『怒り』であり『恐怖』であることは、ひしひしと伝わって来た。
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