【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
まだ私にはそれが無い のだと思う。だからこそ、感情を取り戻さなくてはならない。


だけど今は『取り戻したい』想いより『取り戻したくない』想いが勝っているようにも思う。


それはルイを傍に置いておきたい私のただのエゴなのだけれど、それくらい、今の幸福が大切だという事なのだろうか。


歩いて十分程、校舎の前に辿り着くと、まだ寒い季節だと言うのに里佳子と燭が、揃って校舎の前に立っていた。


「おう、里佳子も燭も揃ってどうしたの?何?二人ついに付き合い出して報告したくてうずうずしてんの?」


「バカ野郎!お前よくもそんな冗談今言えんなクソが!ルイはどうした!?」


二人からあからさまにピリピリした空気が流ていたからかいつもの調子で成が話しかけたようだが、その冗談も今日は全くもって受け入れられないくらい、切羽詰まった様子。


「ルイならアップデートをするので今日はお休みです」


「アップデートだと!?そんな事したら、アイツは……!」


おそらく、里佳子はもうルイがどのような状態か察しがついている。里佳子に何らかの仮説を聞いた燭も。
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