【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
私達はそうして、辛い事があっても少しでも心を安堵させる為の『機能』をそれぞれに持っている。


私や成は、感情を消去するという、ルイが機能を消し去る事で生きながらえる方法とある種同じ方法で自分の身を守って来た。特に私は急速に、全てを失う事で。


身を守る為に手放したものを全て取り戻すのが正しいのか、或いは、悪い事なのか。


幼い私が身体の奥底で、それが怖いと叫んでいるようにも思える。私にとって、キャパオーバーな事だと警告しているようにも。


それでも取り戻したい。例えそれがパンドラの箱だったとしても。そうする事で、皆がルイの事を考えられるようになる。先に進める。だから、足踏みしたくない。


「ルーイ!準備は出来たか?」


「ちょっと待って。もう少し」


ラボのドアを隔てた先、成が声をかけたのに対しルイの返事が聞こえた。


今から箱を開けに行く。たった十七年の短な、でも、絶望も未来の希望さえも詰め込んだパンドラの箱を開けに。
< 311 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop