【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「エミリ起きて、着いたよ」


新幹線で和やかな時間を過ごし、いつの間にか寝ていたらしく、ルイに声をかけられて目を覚ます。


「まずはナルの別荘に荷物を置いて、ご飯を食べてから動き出すよ。エミリ、どこに行くつもりなの?」


「まずは、当時住んでいたところを見に行こうと思っています。そうしたら、何かを思い出すかもしれません」


私の答えに頷いたルイは、最初出会った頃とは全く別物の、彼という一個体が成す笑顔を私に向けて、先に新幹線を降りていた皆のところへ歩き出す。


「取り戻そう、エミリの全部を」


見慣れた顔、見た事のある場所、だけど、私には見たことの無かった景色が広がって見えた気がした。


始まる。終わった筈だった世界だけど、ルイに、成に、里佳子に燭に入口に引っ張られ立たされ、背中を押されて。


それは得体の知れないものかもしれない。パンドラの箱かもしれない。開けてみたら絶望しかなくても、終わったと決めつけていたのに実は勝手に終わらせたつもりでいたこれからを始める為の、試練でしかないのだ。
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