【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「エミリ、表情が曇っている……やっと久々に笑っていたと思ったのに」


心配されるべきはルイなのに。私がルイを心配してなくては、無茶しないようにしなくてはならないのに、結局私は甘ったれて、それにルイが気付く事の繰り返し。


もう止めよう。ルイが自分を想って、自分を第一に出来るようにする為に、私は完全体にならなくてはいけない。


「大丈夫です。自分が何をしに此処へ来たのか再確認していただけですから」


私は私の全てを、パンドラの箱に詰め込んだ全てを取り戻し、君と生きる為に此処に来た。だから余計な事を考えている暇は無い。


「そう。……ねぇエミリ、真実は残酷でしかない。だけど、それでもキミは、ヒトはそれを求める。今更だけど、どうしてそういう仕組みなんだろうね。皆が苦しい事に蓋を出来れば理想の楽園なのにね」


これは、ルイが言った事は心を持ったからこその純粋な考え方なのだろうか。


しかし、私は心を取り戻した事で思う。真逆な事を。そして言葉に紡ぐ。


「残酷な真実を受け入れられるから、人は幸福でいられるのだと思います。それを経験したからこそ。……私達は、幸福に生きて行きたいから、残酷な真実に立ち向かって行けるのでしょう」


取り戻すことでそれに気付けたから、だから、私はもう後戻りはしない。振り返る事があっても、幸福に背中を向けないのだ。
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