【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
ルイは嶋山成の言う通り、御堂里佳子からホチキスを預かって代わりに作業を始める。


「じゃあ、悪いね片岡。お前の家族とこの馬鹿お奉行に甘えて先に帰らせて貰うよ」


「お気遣いなく。大丈夫ですよ」


やはり、御堂里佳子には私に対して特別な感情は無い。素直にそういう事を言えるのだから。


そういう部分を見抜いてか、ルイや嶋山成、そして私も、薄々楠本燭と御堂里佳子の間に何かあると分かってしまったし、そう思われてると彼女自身も気づいているのだろう。


「片岡ぁ、余計なお世話かもしれないけど、もう少し笑ったりすれば?せっかく美人なのに」


そう。ただ、素直なだけなのだ。


私は答えるに答えられなくて会釈をすると、御堂里佳子は困ったように笑う。


「ったく……絶対修学旅行終わるまでにそのムカつく涼しい顔、笑顔にでも怒り顔にでも、泣き顔にでもして崩してやるから覚悟しなよ」


そして、会釈していた私の頭をぽふ、と性格に反して女の子らしい指の細い小さな手で軽く叩いて、御堂里佳子はすたすたと教室を後にした。


「何か、御堂って思ったより姉御だよな。カッコイー」


「間違いなくナルよりはカッコイイんじゃない?」


御堂里佳子の言葉と行動が予想外で動きを止めていた私の横で、嶋山成とルイはそんな会話をし始めていた。
< 32 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop