【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
寒くて寒くて、堪らない場所に、何故だか今より少し幼い、中学生の頃の私が膝を抱えて座っているのを遠目から眺めている。
ああ、これは夢なんだと、ふわふわとした感覚の中でそう思った。
だって、今日は修学旅行の実行委員の仕事でしおりを作って、夜にはルイが「ボク、アップグレードしたんだ」なんて言って作った料理人並の創作イタリアンを食べて、ベッドに潜ったのだから。
今膝を抱えて座っている少女は、まだ良く笑い、良く怒り、そして、たまには泣くような別世界の輝く少女だったのに、何故あんなに暗い所にあんなにボロボロになって座っているのか。
少女の傍らには、ルイよりも機能の乏しいであろう、つぶらな瞳の小さなおもちゃのロボットがいる。
「ソバニ、イルヨ。ソバニ」
甲高く愛らしい、感情のない、それでいて左の方の胸の辺りがぽかぽかするような、懐かしい声。
少女は幸せそうに笑った。それもまた、酷く懐かしい顔で。
この、左の方の胸の奥の温もりみたいなこれは、なんだったっけ。
どうしてだろう。こんなにも、寒い場所なのに温かい。