【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「ダメ……ダメ」


機械的な音が、映像越しに流れた。ルイの声だろうか。沢山の暴行を受け、今にも壊れそうなルイの声。


「触らないで!嫌ァァ!」


少女の悲痛な声。彼女より少し大きな大人の女性を組敷く少女は、錯乱し、全てから解放される為だけに、全身の力を込める。


「ダ、メ」


ルイの声、もっと聞いてよ。ダメだよ。それをしてはいけない。大切な物を失うよ。


ルイと、私の想いが共鳴する。声にならない声で彼女に語りかける。


けれど、結局無力な私は何も出来ないまま、絶望を、終わりを見届けるのみ。


蛙の潰れるような声が途切れ、放心状態の幼い私が、天井を仰いでいる姿が、止めたいのに流れ続けた。


やはり、罪は罪でしかない。誰も私に優しい声等掛けてはいけない。


間違っていても、私を愛していた人を愛せなかった少女の、愚かな結末が、私の罪の真実であり、この先私が死ぬまで背負うもの。


世界はいつだって残酷に微笑んでいる。それを知り背負いながらも幸福を目指し人は歩く。


私は私を愛して、愛して狂った女性が愛娘を殺す罪を、自身がその女性を殺すことにより背負ったのだ。


忘れてはいけない、終わりを。もう、死ぬまで片時も忘れてはいけないのだ。
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