【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「良いんだ。ボクはボクの天命を全うするだけだ。それどころか、今、ボクはもしかしたら命を削るお願いをしようとしている」


ルイの言葉に、父は完全に動きを止めてルイと目を合わせた。父の瞳越しに映るルイは、汚れの無い、美しい生命体。


「エミリに返したい。感情も、記憶も。お父さんはエミリの為にボクを生み出し、生まれ変わらせたんだよね?だったら、二つ程ボクに機能を付けてくれない?」


「装備をするみたいに簡単に頼むねぇ。……でも、嫌だと言ってもまた頼むんだよね?何が望みなのかな?」


息子を前にした父親の顔をしている強いて言うなら私に似た彼は、とびきり悲しげに微笑む。


そんな父を目の前に、生まれ変わってほんの数分の息子は、最大級の我儘と、親不孝を父に言葉で紡いだ。


「エミリに触れたら泣けるように。泣き虫だった彼女の代わりに、近い将来返すまで泣けるようにして。もう一つは、寝ているエミリにボクの記憶を電磁波で流せる機能を。……ボクを造ったお父さんなら、出来るでしょう?」


「……そんな機能を付けたら、君はきっと半年と持たないよ?構わないかい?」


返って来た答えに、今度は視界が上下した。ルイが頷いたのだ。


再度父を見たルイの視界には、涙を零す父の姿が映った。嗚呼、この人はルイの父親だ。泣き方までもが瓜二つなんだ。
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