【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「……ルイ!」
叫んだのは彼の名。叫んだのは私の声。
そこは現実の、大切な人達が待つ世界で、私はルイの指と自らの指を強く絡め、ルイと強く抱き締め合っていた。
「笑里、お前、大丈夫か!?急にルイにキスされたかと思ったら、二人揃って動かなく、なるし……」
ルイの肩越しに、猿のように鼻の頭を真っ赤にして泣き叫ぶ里佳子の顔が見える。
「ごめんなさい。大丈夫。ルイが私に全部見せてくれた。絶望も、希望も、全部」
自然と微笑みが浮かぶ。大切な人が泣いているという事が愛おしくて。背中に乗って離れない罪さえ、愛おしくて。
「私は平気です。それより、ルイ……ルイ」
強く抱き締め合った身体を名残惜しくも解き、ルイを見る。
なのに、ルイは私をちゃんと見ない。瞼をとろんと半分落とし、今にも眠りそうな顔をしているのだ。
何となく分かる。ルイは命をかけて、私に全てを見せたのだと。その代償が今にも振り注ごうとしているのだと。
「ねぇ、ルイは充電切れそうなんだろ?燭がタクシー呼んだから、家に帰ったらすぐ充電しような?」
成が震えた声を上げ、私に触れてポロポロとひと雫を落とし続けるルイに呼び掛ける。