【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「あり、がとう……キミ達が、いたから、頑張れた」


「なんっだよぉ……!笑里、全部思い出せたんだよな?じゃあ、これからだよ、これから、楽しい事しか無いじゃん?ルイも一緒だろ?」


我慢ならずに泣き出した成に、傍に座り込んでルイを揺する里佳子に、ルイは力無く頷く。


「ボク、次目が覚めたら乗馬がしてみたいな。アカリ、かっこよかったから」


「教えるよ。ルイだったらきっとすぐに、きっと……!」


泣きながら微笑むルイに、私ごとルイを支えていた燭も答える。燭の涙が私の肩に落ち、温もりが冷め、覚めたら湿り、温まり、また冷める。


「約束、だよ。……ねぇエミリ、愛、してる、よ。傍に、いるから。これからも、ずっと。……疲れちゃった。少しだけ、おや、すみ」


そっと瞼を閉じたルイに、三人は声を上げて泣く。喉が枯れてしまうくらいに。きっと、身体中の水分を使い切る勢いで。


しかし、私の瞳は乾いたまま。ひと雫も落ちては来ない。


感情も、記憶も全部取り戻したのに私は泣けないまま。ルイが代わりに泣いてくれないと、泣けないままだよ。
< 338 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop