【完】Ｒ・Ｕ・Ｉ〜キミに、ひと雫を〜

覚悟をしていなかったわけでは無い。ルイが命懸けで私に全てを与えたから、その時が早まっただけなのだ。


全部、私のせい。何よりも大事な存在をこの手で失うという贖罪が、周りを巻き込み遂に私に降り注ぐ。


真っ暗闇に降り注ぐ黒い雨だ。何も無い白も怖いけど、負を吸い込み、重たく降り注ぐそれらもまた、全てを取り戻したからこそ怖い。


「あの……おじさん、先生も。『このままでは』って事は、ルイは目覚める可能性があるという事ですか？」


その暗闇の、黒い雨が降る場所でも、人は足掻いて優しい希望の光へと手を伸ばす。


それは燭が言った言葉だった。誰しもが修復不可だと諦めたルイを、諦め悪く、彼らしく頭良く、往生際悪く追いかける。


「ある事にはある。……けれど、苦しい決断になるかもしれないね」


しかし、現実が差し出した希望の光は、彼ほど優しくは無いようだ。


「最新のHDDに、ルイの全てをバックアップしてある。それに取り替えれば、ルイはこの身体で、この記憶のまま目覚める事になるだろう。……けれど、君達はそれが完全な解決策じゃないと分かっている。違うかい？」


人は人でしかない。神様ではない。どれだけ知識を、技術を駆使しても同じ命を蘇らせる事等出来ない。つまり、そういう事でしょう？