【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
父と美樹、それから長い眠りに就いたルイは車で帰り、私達は成の別荘に残り、私達だけでこれからの事を話し合う事に決めた。
「……正直に言うと、俺は新しいHDDにバックアップを取ったルイが目が覚めるのが良いと思う」
何時間皆が黙っていただろう。何が正しい決断なのか考えただろう。不意にそう言ったのは、あの時誰よりも早く大人達に可能性を求めた燭だった。
「もうそれがルイじゃないって事は分かっている。目覚める『彼』に芽生えたものが、俺達の知るルイでない事も。……でも、片付かないだろう、俺達の気持ちも、ルイの想いも、思い出だって。だったら何度でも繰り返して、過ごせば良いじゃないか」
現実が一番見える人だから、冷静に考えられる人だから、誰よりも一番に反対されると分かっていながらも、燭は思った事を口にする。
今、私達が感傷的になってルイの事を決断しないよう、静かに、優しげで一定の低音を保つ事を心掛けて、それでも、重た過ぎる決断に肩を震わせながら。