【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「アタシは反対だ。それを繰り返すのにアタシ達は慣れて行くだろうよ。でも、別れを、死の恐怖を何度も経験して、でもバックアップを取らないでまた忘れて繰り返すルイの記憶を持つそいつらがあまりにも不憫でならねぇ」


そんな燭に、やっとの思いで、けれども落ち着いた様子で意見を吐き出したのは里佳子。


出会った頃は何も考えず、良い事も悪い事もいつだって口にしていた里佳子が、彼女なりに考えを噛み砕いて、言葉を紡ぐ。


「命は一つしかねぇから大切なモンだし、そいつを大切に出来るんじゃねぇの?何度も目覚めと別れを繰り返すなんて、ルイや次に目覚めるルイの記憶を持ったそいつらを、それこそ機械かおもちゃみたいに扱ってるみてぇで耐えらんないよ、アタシは。そんなの考えただけで気が狂いそうだ」


頭を抱え、心の痛みをぐっと堪え、言いたい事の多分半分も言えずに苦しい顔をする里佳子を初めて見た。


不器用に生きて来た、けれどもいつだってまっすぐに、嘘偽りなく考える里佳子の苦悩する言葉達に私も口の中が苦くなる。
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