【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
どちらが正しいとも、間違っているとも言えない。


このままルイとさよならを決断する程の勇気はまだ私には無いし、けれど、ルイの記憶を持って目覚める新たな『彼』をルイだと思う事は出来ないだろう。


「ごめん……俺は考えが纏まらない。正直な気持ち、もっとルイと沢山の時間を過ごしたい。新しいHDDを入れれば俺達の記憶を持った、あの見た目のヒューマノイドロボットが話してくれれば、多分俺はそれをルイだと受け入れられると思う」


二人の正反対の意見を聞き、瞳を小刻みに動かしながら、今度は成が自分の考えを話し始めた。


「でも、俺がルイだったらキツイ。何度も大切な人との別れを繰り返して、何度も悲しむ。なのに、バックアップを取っているのは別れの前までで記憶が無い。最初のルイだった頃の自分と繰り返した自分が同じ存在なのか、ずっと悩み続けるんだろうなって思う。……だから、答えが出ない」


成は捨てられない。捨て切れない。だからどの決断に行ったとしても考えられるその先の気持ちまでもを拾い、戸惑い、瞼を伏せる。
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