【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
固く閉ざされた瞼に生えた長い睫毛に触れたら、ふわふわと柔らかかった。


その柔らかな感触を指先で楽しんでいると、それがゆるりと湿り気を帯び、柔らかさを増す。


「こ……れは?」


そして、久しぶりに気持ちが揺れ動く程に、その現実に動揺してしまう。


ルイのその柔らかな瞼から、じわりと浮かんだぬるい水は、やがて、頬を濡らし、私の左胸に染み込んでゆく。


これは、涙だ。ロボットの筈のルイが泣いている。私が捨て失せた物を、彼は、流す事が出来る。


こんな機能、どうしてあるのだろう?なんの意味があるのだろう?


ただ分かるのは、本物なのかも分からないなこれを見ていると、失った筈なのに有り得ないけれど、私からも零れそうな感覚が止まない。


そうか、きっと、今のこれは夢の続きなのだ。


ルイが現れてからやたら私の捨て失せた世界の住人と関わっていたから見る、幻想なのだ。


だったらこのまま目を瞑ってしまえば良いだけ。そうしたらきっと、次に目覚める時は元のいつも通りの日常に、戻るだけ。
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