【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
父だって悲しいのに、成だって、今にも泣きそうな顔をずっとしながらも冷静なふりをしているのに、身に付けた感情の装備は、まだ私には上手く扱えない。


目の前の大人は、私や成よりもずっと上手く感情を押し殺して口を開いた。


「ここだけの話、ルイは国家機密の研究だ。僕はルイの成長、様子、あらゆる事を国の機関に報告して来た。壊れたのもまた、然り」


私達子供の事情はいつだって自分勝手だ。私達の納得の行くまで時間を延ばす事なんて出来るわけが無い。


ルイは今や一つの生命体だと言っても良い存在だが、元を返せば『感情を持てるヒューマノイドロボット』として生まれている。その裏に膨大な何かがあって研究されていてもおかしくはない。


「心を持つロボットなんて危険だと、一度は中止された研究だった。それを再び動かせたのは、ルイが君達と時間を過ごす前に自分が危険でない事を、時間のリミットを自らあちらへ提示したからなんだ」


大きな渦の中、その大きな渦に気付きもせず私達は、渦の中心でいつだってばたついていたという事だ。


現実にある真実が残酷だなんて分かっていた事なのに、私達の世界が小さなものだと知っていたのに、いざ外の大きな渦を見せられると、呼吸が乱れてしまう。
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